3月の代表メッセージ
☆2024年3月13日☆
[いじめから子供を守ろう メールマガジン]
◇ 代表メッセージ ◇
■□ 横浜市教委、隠蔽体質は変わらないのか □■
暖かな2月から寒さを感じる3月になりました。
春の気配は感じるも、足踏みしているようです。
入試もほぼ終わり、卒業式を迎えた子供たちも多いようです。
学年末には先生方の異動も発表され、
学友との別れや教師との別れに涙する子らも多いと思います。
新しい門出を迎える準備が着々と進んでいるように見えます。
さて、横浜市のいじめ事件が気になっています。
2011年には、福島第1原発事故から自主避難してきた小2男子がいじめを受け、
150万円を巻き上げられたにもかかわらず、
学校が放置していた事件がありました。
この事件に対して
教育長が「いじめと認めない」と発言し、大きな問題になりました。
2019年3月には、横浜市教委は重大事態2件の調査報告書を公表しましたが、
二つの事案とも、調査委員会から、
学校側のいじめに対する理解不足や対応の遅さなどの問題点を指摘されています。
2021年2月には、横浜市の男性教諭が
小4女児にプリントを配らなかったり、給食の盛りを少なくするなどの
陰湿ないじめを繰り返していました。
このように、横浜市では、ニュースになるような重大ないじめ事件が発生した際に、
隠蔽をはかる傾向がかなり強いように感じます。
そのような中で、今月、2020年3月に、横浜市の中2の女子生徒がいじめ自殺した事件について
第三者委員会が、「いじめがあった」と認定したというニュースが流れました。
今月の3月8日に第三者委員会の会見、遺族側弁護士の会見が行われ、
その中で、横浜市教委が学校の報告書から「いじめ」という文言を削除するよう指示していたことも
発覚いたしました。
管轄する組織からの高圧的な「隠蔽行為」そのものと言えます。
詳しくはNHKの「かながわ情報羅針盤」において報道されています。
以下、報道を引用し、まとめてみました。
——
報告書の中では、中学2年生の時に、複数の男子生徒によるからかいと、SNSのやりとりについて
いじめと認定しています。
その上で、「いじめやいじめによる孤立感が強く影響して自殺したといえる」として、
因果関係があったと指摘しています。
(中略)
市の教育委員会をめぐっては、学校側が行った基本的な調査の報告書の案には、
当初、「いじめ」という文言が入っていたにも関わらず、
教育委員会がそれらをすべて削除するよう指示していたことから、
そうした対応の経緯について「誤っているというほかない」と厳しく指摘しています。
——
今回のNHKの報道からは、学校側のいじめが起きた場合の対応方法については
教師、および組織としての対応のスキルの不足が明瞭に指摘されています。
第三者委員会の指摘は、非常に大切な内容ですので、やや長くなりますが引用いたします。
——–
いじめ発覚までの対応
●生徒からの聞き取り方法について
担任は自殺した生徒からいじめの相談を受けた翌日、
複数の男子生徒を一度に集めて話を聞いていたということです。
第三者委員会はこうした方法について問題だと指摘して、
「友人の面前で真実や本音を話しにくく、
誰が主導的な役割を担ったかどうかなどの点は、
友人関係を意識して話すのをためらうことも十分に考えられる。
個別に呼び出して聴取する方法をとるべきだった」としています。
また、いつどこで、何をしたのかという具体的な事実を十分に聴き取れなかった点も、問題だと指摘して(中略)
誰がどのような言動をしたのかについて意識した聴き取りができていないとしています。
●教職員間の情報共有が不十分
担任が行った事実確認の具体的な内容が、学年の職員の間で共有はされたものの、
その問題性は指摘されないまま事実確認を終えることになっていて、
こうした対応について「事実を確認する方法や内容は極めて不十分である」と指摘しています。
(中略)
●不登校後の経過観察
担任は2019年10月に保護者と面談し、
「嫌われているように感じる」「こそこそ話が聞こえる」といった悩みを聞いて、
いじめが継続している可能性を把握していたとしています。
しかし、自殺した生徒から事実や気持ちを確認してなかった ということです。
第三者委員会は
「十分な聴き取りを行っていじめの継続の有無など事実関係を調査するべきであった。
不登校になったあとであっても生徒から直接悩みを聞き取ることは必要であり、
いじめの継続が原因で登校しにくくなっているのかどうかを明らかにし、
仮にそうであるならば直ちに状況の改善に努め、
再び登校できる環境を整える必要があったが
そのような確認はされなかった」と指摘しています。
(中略)
●事実明らかにする姿勢を欠く
ほかの生徒への聴き取りについても問題点があったとし、
具体的には、早く情報を収集するという目的に沿って行うべきだったにも関わらず、
こころのケアが目的となっていたことや、
本来は対象を広く検討すべきだった聴き取りの対象についても、
5人のみに限定していたことを挙げています。(中略)
こうした対応について
「そもそも事実関係を可能な限り明らかにしようとする姿勢を欠いていたと評価せざるをえない」
と厳しく指摘しています。
(2024年3月8日 NHK「かながわ情報羅針盤」より)
——-
遺族の代理人である弁護士の方の会見では遺書が読み上げられました。
その遺書には、
「迷惑をかけてしまった皆さん、本当にごめんなさい。
なぜ死んだかというと、いじめが辛かったからです。
世の中の人たちにはいじめと判断してもらえないようなことだと思います。
それでも私には辛かった」
とあったとのことです。
また、ご遺族の方からは、
「誰に対しても優しく、本当に優しすぎるくらい心の優しい娘でした。
娘が亡くなってすぐ学校の報告書をうけとりましたが、
『いじめ』というの文字が一つも無く、学校で何があったのか私たちには分かりませんでした。
闇から闇に葬られるのではないか、そんな強い不信感を抱きました。」
とのコメントが出されています。
これらの指摘で特に問題だという点を挙げてみます。
1. 加害者からの聴き取りを集団で行い、個別にはしなかった。
2. 被害生徒がいじめが継続していることを訴えても、確認しなかった。
3. 他の生徒への聴き取りは、いじめの「事実の確認」ではなく「心のケア」のため。
4. 5人にしか聴き取りしていない。
5. 報告書から「いじめ」の文言を削除。
これで、「いじめ解決」などできるはずがありません。
「解決しよう」という意欲は感じられず、
逆に穏便にすませようという意図があったのではないでしょうか。
第三者委員会は、丁寧に調査され、正しい判断を示されたように思います。
加えて、この報告書を出すまでには、様々な圧力があったのではないかと推察いたします。
それでも、間違っているものは間違っているという姿勢を貫かれたことは、評価すべきだと思います。
横浜市は、早急に、隠蔽体質からの脱却を図らなくてはなりません。
子供たちの未来を、子供たちの幸福そして学業を守るための組織が教育委員会であり、
かつ学校や教師の仕事ではないでしょうか。
昔から教職は、「聖職」と言われる所以がここにあるはずです。
今年度、今学年もまもなく終わってしまいますが、いじめなんて無いのが一番です。
不安になられたり、お困りのことがありましたらご遠慮なくご相談いただければ幸いです。
一般財団法人 いじめから子供を守ろうネットワーク
代表 井澤一明